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MOVIE BOYS

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映画が好きです。だから一生懸命観ます。面白いところをみつけて楽しみたいけど、時としてそれが出来ないこともあります。でもそれも映画です。

繕い裁つ人/誰がために仕立てるや 

繕い裁つ人池辺葵のコミックを『しあわせのパン』の三島有紀子監督で映画化。祖母を継いで仕立屋になった主人公と彼女を取り巻く人々の間に繰り広げられる人間ドラマだ。主演は『渇き。』の中谷美紀。共演に『永遠の0』の三浦貴大、『小野寺の弟・小野寺の姉』の片桐はいり、『小さいおうち』の黒木華、伊武雅刀、中尾ミエ、余貴美子ら演技派がそろった。静かな中に服を通した人のぬくもりが感じられる一作だ。

物語序盤は静かに滑りだす。しばらくは主人公市江(中谷美紀)の人となり、そしてその市江に入れ込む藤井を描いているだけでこれといった大きな動きはない。『ぶどうのなみだ』『しあわせのパン』もそうだったけれど三島有紀子監督の作品はゆったりとした雰囲気の中で物語が紡がれていくのが特徴でそれ故に…うん、案の定劇場内から「グー、グー」といびきが聞こえてきた(苦笑)まあ仕方ないよね、実際心地良い空気感が醸しだされるからこそ眠くなるのであって、クラッシック音楽を聴いて眠くなるのと同じだ。市江は祖母の洋裁店を継いだ二代目で彼女が仕立てる服はご近所の方々を喜ばせている。藤井はそんな市江の服をブランド化して売りたい大丸デパートの社員だった。
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でも市江はそんな藤井の願いを断り続ける。藤井は市江が心のなかでは祖母を超える服を仕立てたいと思っているに違いないと確信しているのだけれど、彼女は祖母の作った服の仕立直しや、祖母の作った型紙で服を仕立てることでよしとしていた…。中谷美紀は元々クールで心の強いイメージの女優だけれど、そんな彼女が演じることで市江の職人としての挟持や拘りがとても素直に受け止めやすい。ただ市江はそれだけでなく、どこかか弱さと繊細さも同居していて、相反するこの二面性を一人の女性の中で綺麗に融合できているのが素晴らしい。そしてこの二面性こそが彼女の本質だとすれば、当然彼女は藤井の確信に近い思いを内に秘めていることになる。
繕い裁つ人03
つまり職人ならば師匠の祖母を超える服を作りたいという想いは持っていて然るべきだ。ただ自信がない。何故か。それは物語を観ていると良く解る。祖母や彼女の仕立てたドレスやスーツは、一生ものとして町の人々に愛され続けているのだが、それはつまりその人の人生に寄り添うことに等しい。型紙には仕立て直すたびに、その時々の出来事が書き込まれていき、その人の節目の記録にもなっているのが印象的だ。仕立てた服を着た30歳以上のお客さんが年に一回集まるダンスパーティー“夜会”。そのシーンでは人に寄り添った洋服がどれほど素敵なのかを目の当たりにすることが出来る。しかし、それは同時に新しく寄り添うべき人々がいないことを意味するシーンでもあったと思う。
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葛藤を続ける市江の姿は、藤井からすると挑戦から逃げているだけに見える。でも実はそれは違うんだね。偉大な祖母と祖母の残した服やそれを着る人々に寄り添うということからは逃げることなんて出来はしない。打って出るだけが挑戦ではなく、守り続けることだって挑戦なんだ。しかも彼女自身だって祖母の軛から抜け出し自分らしさを出すにはどうしたらいいのかという葛藤をずっと抱き続けていたはず。でも袋小路に陥った彼女は進むべき道が解らなくなっていたように思える。藤井だけでなく友達の葵(片桐はいり)や母親の広江(余貴美子)たちも彼女に対して道は示していたけれど、本人はそれに気づけていなかったんだと。
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一方藤井は藤井で“夜会”でのお客さんの姿や市江の言葉から、彼女は逃げていたわけではない事に気づき、彼女の前から姿を消す。そこから徐々に市江の気付きが始まるんだ。食べ慣れた喫茶店のチーズケーキの味が変わったように感じたのもその一つだろう。創業以来変わってないというチーズケーキの味も、その時の人次第で違って感じる。守り続けることは大切だけれど、それは必ずしもその人に寄り添っているとは限らないんじゃないか。目の前に自分の服を必要としてくれる人がいるならば、その時その人のために服を仕立てるのが自分の使命だ…そんな風に気付いたのじゃないかと俺には思えた。一歩踏み出した市江の表情は以前より暖かみが感じられて素敵だったな。
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ストーリー:市江(中谷美紀)は祖母が始めた洋裁店を継ぎ、町の仕立て屋の2代目店主として日々年季の入ったミシンの前に座っている。彼女が職人技を駆使して丁寧に仕立てる洋服は、依頼人たちを喜ばせていた。職人気質の市江はブランド化の依頼にも目もくれず、その服に袖を通すたった一人のためだけのオーダーメイド服を縫うだけで幸せだったが…。(シネマトゥデイ)



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