10« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»11

MOVIE BOYS

  // 

映画が好きです。だから一生懸命観ます。面白いところをみつけて楽しみたいけど、時としてそれが出来ないこともあります。でもそれも映画です。

薄氷の殺人/結局ジャンも同じなのか 

薄氷の殺人第64回ベルリン国際映画祭の金熊賞と男優賞を受賞した作品。中国北部の地方都市を舞台に起きたバラバラ殺人事件を追う元刑事が、その被害者と関わりのある女性に惹かれていく。監督は『こころの湯』のディアオ・イーナン。事件の真相に迫りながらも容疑者の女性に惹かれていく刑事を『戦場のレクイエム』のリャオ・ファン、その女性を『海洋天堂』のグイ・ルンメイが演じている。

1999年、中国は華北地方の6都市の石炭工場でバラバラに切断された男の遺体が見つかるところから話は始まる。妻に離婚を突きつけられた刑事ジャン(リャオ・ファン)は心中穏やかならぬまま捜査に出動し、結局容疑者のリウ兄弟を追い詰め射殺するんだ。ただしその時に同僚の刑事2人も殉職する。同僚の殉職もさることながら、容疑者を殺してしまったため事件の真相は謎のままに…。とまあ、始まって20分ぐらいはこの作品における長いプロローグと言っていいだろう。そして2004年…、ここから本当の物語が始まる。簡単にいえば、件のバラバラ殺人がまた起こり、彼は元同僚に協力して捜査に参加することに。そしてそこに浮かび上がってきたのがウー・ジージェン(グイ・ルンメイ)だった。
薄氷の殺人01
更にウーは5年前の被害者の男の未亡人で、しかも今回起こったバラバラ殺人の被害者の両方共親しかったという情報が出てくる。ところで、この作品をいろんな評論家はサスペンスだとかミステリーと表現しているが、正直俺にはピンと来ない。何故ならどう考えてもこのウーが真犯人でなければ話が成立しないから。予告編を観てもそう思うのだけれど、むしろこの物語は真犯人そのものを秘密にすることに重きを置いていないと思う。一番重要なのは明らかに真犯人の女にジャンがどんどん惹かれていってしまうということ。そして、そんな関係の2人がありながらも彼女を真犯人である謎を解くことだ。そして、その禁断の人間関係をこの地方の独特の景観で表現していることに意味がある。
薄氷の殺人02
同僚を失い、妻を失い、自らも負傷し、いうなれば生きる目的を失ったジャンにとって、ウーという女性は全てだったと言ってもいい。つまり愛する女性であり、同僚を失うきっかけとなった憎むべき殺人犯という、彼に必要なすべての要素を一人の女性が併せ持っていたということだ。一方のウー、彼女はクリーニング屋で働いていて、店主にはセクハラまがいのこともされている。彼女の美しさは地方都市にはそぐわない、都会的な美しさだが、その表情は常に暗く、心は硬く閉ざされている。雪深く陰鬱とした町の風景はまるでそんな2人の心象風景のようにも見えた。監督は美しい雪景色ではなく、あえてドロにまみれた黒っぽい雪景色を撮りたかったのだそうだ。
薄氷の殺人03
暗い街の中で明るいところといえば、屋外スケート場だったり、ダンスホールだったり、遊園地だったり。しかしその明るさはどこか表面上の軽さだけが際立ち、本質的な暗さを余計に際立たせている。そこには世界第二位の経済大国における地方都市の現実が垣間見えるようだ。ジャンはウーをデートに誘う。誘いには応じるものの、相変わらず彼女の心は氷のように冷たく、硬く閉ざされていた。遊園地の観覧車で彼女を抱くジャン。男というのは単純なもので、想いを遂げた彼は朝食に朝粥と熱々の肉まんを頬張る。肉まんから立ち上る湯気は彼の心の中そのものだろう。ガッツリ喰らう彼の姿からは、生きる目的も生きる意味も取り戻したかのように思える。
薄氷の殺人04
そして逆に彼女は逮捕されることに…。事件の動機はいずれも様々な男たちの欲望の犠牲になっていたことだった。見かけそのままに薄幸の美女は、結局それ故に救われない。物語当初は同じ温度を共有していたジャンとウーは、物語の最後では全く異なる温度差となる。宴席で先輩刑事に事件解決を褒められ喜び、ダンス教室でウキウキで踊りまくる彼の姿はその最初とのあまりの差に驚かされた。そして俺にはちょっとその心情は理解できない。いや、きっと誰も理解できないんじゃないだろうか。結局ジャンもウーに殺されてきた男たちと同じなのかもしれない…。
公式サイトへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←Click Pleae♪
ストーリー:中国・華北地方で切断された死体の断片が次々に発見され、刑事ジャン(リャオ・ファン)が捜査に当たるが、容疑者の兄弟が逮捕時に射殺されたため詳細は誰にもわからなくなってしまう。5年後、しがない警備員となっていたジャンは以前の事件と手口が類似した猟奇殺人が発生したことを知り、独自に調査を開始。やがて、被害者たちはいずれもウー(グイ・ルンメイ)という未亡人と近しい関係だったことを突き止めるが…。(シネマトゥデイ)



関連記事

テーマ: 映画レビュー

ジャンル: 映画

中国映画  /  tb: 7  /  cm: 2  /  △top

コメント

うん、ウーがもちろん犯人だとわかるけど
それで謎的にはじめはしていて、
で次々欲望の犠牲になり頃していく、そしてジャン刑事までもがって
ところなんだろうけど、
映画としてみたら
動機は?復讐だけなの?とか
それならある意味同意でなんだし
拒絶すれば?とか思っちゃう
単純に私は。
それじゃ最初からこの映画にならないね


あのラストとかダメでした〜

URL | mig #-

2015/01/14 10:26 * edit *

▶migさん

なんかこう世俗的な殺人事件というよりは、別のことを訴える手段としてのテーマなのかなぁ。中国人の監督って時としてこう、素直じゃないというか、観念的というか、そこがちょっと解りにくいよね。まー、やったら脳天気な東洋のリドリースコット、ジョン・ウーみたいのもいるけど(笑)

URL | Caine #5spKqTaY

2015/01/15 00:32 * edit *

△top

コメントの投稿

Secret

△top

トラックバック

トラックバックURL
→http://lovecinemas.blog100.fc2.com/tb.php/80-273e1168
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

薄氷の殺人

綺麗だわ〜、グイ・ルンメイ。彼女をスクリーンで満喫できたので大満足。

だらだら無気力ブログ!

2015/01/12 12:15

「薄氷の殺人」:北野武的な中国ハードボイルド

映画『薄氷の殺人』は、近過去の中国・華北地方を舞台にしたチャイニーズ・ハードボイ

大江戸時夫の東京温度

2015/01/12 19:45

薄氷の殺人/白日焰火/Black Coal Thin Ice

第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞と銀熊賞を受賞した、犯罪ミステリー。 ってことで、一応みてみたが これまでの受賞作も個性派作品揃いで面白かったのもあるけど 基本あまり好みじゃないのが多いかな。 中国北部の地方都市で起きた未解決の連続猟奇殺人事件...

我想一個人映画美的女人blog

2015/01/14 10:11

薄氷の殺人

★ネタバレ注意★  ディアオ・イーナン監督の中国映画。  昨年のベルリン国際映画祭では、『グランド・ブダペスト・ホテル』や『6才のボクが、大人になるまで。』といった秀作を抑え、金熊賞及び男優賞受賞したことで話題の映画だそうです。原題の『白日焔火』は“白昼の花火”の意で、劇中同名のナイトクラブが出てくるほか、ラストシーンではあたかも戦闘シーンのごとく、派手にパンパン白昼の花火が打ち...

キノ2

2015/01/30 11:54

薄氷の殺人

★★★ 製作:2014年 中国,香港 上映時間:109分 監督:ディアオ・イーナン  第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞と銀熊賞を受賞したクライムサスペンスだというのだが、今一つこの映画の素晴らしさを見いだせないまま映画館を出ることになってしまった。  元

ケントのたそがれ劇場

2015/02/07 18:03

薄氷の殺人

白日焔火/BLACK COAL, THIN ICE 2014年 中国/香港 109分 サスペンス/ミステリー/ドラマ PG12 劇場公開(2015/01/10) 監督: ディアオ・イーナン 脚本: ディアオ・イーナン 出演: リャオ・ファン:ジャン グイ・ルンメイ:ウー・ジージェン ワン・シュエ...

銀幕大帝α

2015/05/12 20:53

薄氷の殺人

【概略】 刑事・ジャンはバラバラ殺人事件を捜査するが、容疑者が死亡し真相は藪の中に。5年後、彼はふたつの殺人事件を知り…。 サスペンス 荒涼とした風景の寒々しい部分と、捜査線上に浮かび上がった一人の女に惹かれていく、危げなハードボイルド風のサスペンス。 疑惑の女に堕ちていく―。 物語は1999年、中国の華北地方で発生したバラバラ殺人の謎をめぐって展開していく。ひとりの男...

いやいやえん

2015/06/04 10:23

△top