暮れ逢い/とんだクレ愛くんたち
2014.12.31 Wed. 11:38 -edit-

まず最初に、この作品の物語は俺は嫌いだ。如何なる理由があろうとも他人の妻に恋をしてはいけないし、まして愛の告白などもってのほかだし、更にそれに応えてしまうというのも許せない。ハッキリ言ってどんなに美しく描こうとただの“浮気”だし“不倫”だと思っている。そしてそんなことをする奴は人間のクズだと思う。さらに言えばそんなものを文芸だと評する連中のその考え方も大嫌いだ。でも一応観たからにはどんな話だったのかは書いてみようと思う。出来るだけ個人的な感情は排して書くつもりだけれどそれでもチラホラ出てくるとは思うので、読みたくない人はここで去って欲しい。

時代は1912年のドイツ。つまり第一次世界大戦前だね。鉄工所などを経営する実業家、カール・ホフマイスター(アラン・リックマン)の会社にリチャード・マッデンという青年が入ってくる。優秀な青年だった彼は気難しい社長カールに気に入られ病に倒れた彼の個人秘書として、彼の代役で会社を切り盛りするようになる。でカールの家でその若き妻ロットと運命の出逢いをするワケだ。えらい歳の差夫婦なんだが、何でもロットが昔婚約者を亡くした時に力になってくれたということらしい。一人息子にも恵まれ過程は幸せそのものだけれど彼女は寂しさを感じていた…ということらしい。

観ていると確かに、彼女がオペラに誘っても行かないし、子どもを外に遊びに連れて行ってもあげない、日曜日の礼拝は「そんなに暇じゃない」と付き合わないと、彼女に合わせないことも多々あった。が、それは個人の趣味や方針の範囲であってそれで寂しさを感じるのは所詮金持ちの我儘というものだ。リチャードは両親を亡くし屋根裏で暮らす貧乏暮らしで、立身出世のために必死で学問を志した青年で、彼を慕う女性も同じボロアパートに住む。この対比がなんとも嫌らしい。ただ凄く俗に言えば、レベッカ・ホールの若妻姿はとても美しく、まぁ普通に男が惚れる相手ではあるだろうなとは納得(笑)

ともあれ二人はお互いにそうとは言わないものの愛し合っていく。といってもリチャードがロットに見せるあからさまな視線は誰が観てもそりゃバレバレというもの。逆に荒れで気づかない人がいるとしたらそのほうが人としてどうかしているというレベルだ。カールは気付いているんだけれど、表面上は一切嫉妬心を見せない。この辺のアラン・リックマンの演技力は素晴らしかった。解っていて解らせない、でも妻のことは深く愛しているし、かと言って露骨にリチャードを遠ざけたり嫌がらせをするでもない。そしてともすれば不実の妻の想いを多少なりとも汲んであげようとすらするほど…。

リチャードの提案によりメキシコでマンガンの鉱山を運営することにしたカールは、リチャード自身を2年間メキシコに送り込むことに。突然の別れに激しく動揺する2人。しかし、夫に対する愛がまだ残っているロットは残ることを決める。そして、2人はメキシコから戻ってきたら一緒になる約束を交わす。ところが彼がメキシコに旅立つと第一次世界大戦が勃発し、結局リチャードは6年間向こうにいることに。その間カールは亡くなるのだけれど、その際にロットに全て解っていた事を話し、自分の嫉妬心が2人の仲を裂いてしまったことを詫びるのだった。何と素晴らしい男なのか。

こんなに妻を愛している男がそばにいて、若い男を愛してしまったなどとはふざけるなと言いたくなる。恋愛感情は止められない、そこは仕方ない。しかしそこから先は血の涙を流し気が狂っても自分を止めなくてはならない。それが出来ないならそこらの畜生と同レベルだ。再開した二人はその昔息子を連れて出かけた土地の湖のほとりで、夕暮れのなかキスをする。シルエットになった2人の姿は絵としては美しいのは確かだし、なるほど『暮れ逢い』だろう。でも俺にはこの2人が単に『クレ愛』のバカ者だったとしか思えない。あー胸糞悪いとんだ茶番劇だわ。


ストーリー:1912年。ロット(レベッカ・ホール)の屋敷に、夫ホフマイスター(アラン・リックマン)の個人秘書として、頭が切れる青年(リチャード・マッデン)がやって来る。若妻のロットは青年と惹(ひ)かれ合うも、触れ合うことも甘い言葉を交わすこともなかった。そんな中、青年が南米へ転勤することに。二人は思いを確かめ合い再び会おうと誓うも、間もなく第1次世界大戦が始まり…。(シネマトゥデイ)
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テーマ: 映画レビュー
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コメント
人生経験の薄さを露呈する残念なレビュー
不倫は絶対にナシだというのには全面的に同意しますし面白い映画とは言えないと思います。
しかしながら実に浅いレビューで
人生経験が浅く結婚の経験もない方なのだろうと感じられ
他全てのレビューに説得力がなくなり
たいへん残念です。
URL | さはら #Fq8DiWTI
2016/10/04 09:32 * edit *
許されないのに、はまり行く愚かさ
いろんな、不倫映画ありますけれど、この奥方は、こんなに接近を許された距離にいながら、一線を超えまいとするモラルの概念はしっかりと教育として植え付けられそれゆえの葛藤と、老い弱る夫が、人生の経験者として自ら度量を大きく持ち信じようとする葛藤、
節操不届きな犬畜生のように
くっ付く昨今、こんな近くに普通なら青年を住まわせる事はありえないこの居候的な状況に驚く。妻を信じようとする老いた夫、
綱渡りのようなギリギリの状態の思いを秘め、故意に仕向けられた別れ、頭で考えてわかっていても、
やむにやまない熱情を、美しく描いた映画でした。
このような、綺麗事はまずなかろうけれど、あえて戒律を守ろうとする
深いテーマが伝わってきたさくひんでした。
URL | 韓流マダム #-
2016/10/27 20:15 * edit *
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【概略】 秘書として働く青年・フリドリックは、雇い主・ホフマイスターの若き妻・ロットと惹かれ合うようになる。だが転勤が決まり、ふたりは想いを伝え合いある約束を交わす。 ラブロマンス お互いに惹かれあいながらも想いを隠し、触れられないシーンはもどかしく、静かな感じで濃密な大人の恋愛物語が展開していく…といったら言いすぎでしょうか。 とにかく多いのが…寸止め!これはもうほんと...
いやいやえん
2015/06/16 10:11
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