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MOVIE BOYS

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映画が好きです。だから一生懸命観ます。面白いところをみつけて楽しみたいけど、時としてそれが出来ないこともあります。でもそれも映画です。

バンクーバーの朝日/全ては彼らから始まった 

バンクーバーの朝日1900年代初頭、カナダに移住した日本人は厳しい差別に晒されながらも野球チーム朝日軍の勝利によって現地の人々に受け入れられていく。しかしそこで起こった第二次世界大戦はそんな彼らの努力を無に帰するものだった…。監督を務めるのは『舟を編む人』や『ぼくたちの家族』の石井裕也。主人公・レジー笠原を妻夫木聡が、チームメイトを亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松壮亮らが演じている。

1900年代に日系カナダ移民の二世を中心とした野球チームがあった。それがこの物語に登場するバンクーバー朝日軍だ(以下、朝日軍)。1900年代初頭といえばアメリカでは奴隷制度こそなくなっていたが人種差別自体は合法とみなされていた時代、カナダに至ってはまだイギリス連邦の一自治領だった頃だ。白人こそがのその時代に有色人種が差別を受けるのはある意味当たり前だったが、そんな中でもこの朝日軍は野球を通じて現地の人々との垣根を少しずつ減らしていく存在だった。ただ最初からそう上手くは行かない。身体の大きさもパワーも全く叶わない中で彼らは連戦連敗。そりゃ同じ土俵で戦ったら到底勝てない。
バンクーバーの朝日01
そこでキャプテン・レジー笠原(妻夫木聡)はどうしたら勝てるのかを考えるのだった。その結果導き出されたのが「頭脳野球」(ブレインボール)だ。これは野球が好きな人ならすぐにピンとくるはずで、V9ジャイアンツの川上哲治が採用したドジャース戦法、いわゆるスモール・ベースボールというやつのこと。つまりホームランに依存せずにバントや機動力、犠打で確実に1点を取りに行く戦法を意味する。その伝統は今も日本プロ野球に継承されているが、V9から遡ること約60年前に既にバンクーバーの地で日本人野球チームが実践していたとは正に驚きだ。ただし誤解してはいけないがこの作品は決して野球ドラマではないということ。
バンクーバーの朝日02
だからいわゆるスポ根的な盛り上がりを期待しては肩透かしを食らうかもしれない。もちろん選手たち、特にレジーは野球を心から楽しみ、野球ができること自体を喜んでいたのは間違いないけどね。要するに大好きな野球で白人チームに勝つにはどうしたらいいのかを考えることは、白人社会の中に日本人が溶けこむにはどうしたら良いのかを考えることと同義になっていたと言っていいだろう。だからこそ観たこともないスモール・ベースボールで白人チームに勝ち続ける朝日軍を、遂には地元の白人たちも応援し始めるのだ。全力を尽くして戦うものに対するリスペクトを忘れないというのは彼らの美点の一つでもある。
バンクーバーの朝日03
さて、主要な登場人物はみな若手の演技派が出演していておさまりが良いのだが、個人的にはレジーの妹役を演じていた高畑充希に注目していた。彼女は現在上映中の『アオハライド』で本田翼演じる主人公の友人役として出演しているが、それより遥かに光っている。頭もよく努力家なエミーは一度は大学進学のための奨学生に推薦されるが、結局それは人種差別でダメになってしまう。そんな彼女が哀しみを胸に秘めながら、それでもなおカナダという国を好きでありたいという心、そして野球が好きで朝日軍を応援する心を「Take Me Out to the Ball Game」という曲に乗せて歌う。
バンクーバーの朝日04
訳すと「私を野球に連れて行って」というこの歌は、今でもメジャーリーグの試合の7回終了時に観客が歌うという習慣があるほどで、俺はこれを聞いた瞬間涙が出てきたよ。たかが野球、されど野球、同じスポーツを愛する者として現代まで続く日本とカナダの礎が実はこんなところにあったとは、歴史の不思議さを感じずにいられなかった。優勝決定戦では朝日軍が9回裏2アウトから逆転で勝利する。この1勝は優勝を決めた1勝という以上に、日本人と現地白人の関係の夜明けを予感させる歴史的な1勝であり、この時の朝日軍は文字通り「バンクーバー(に住む日本人)の朝日」だった。
バンクーバーの朝日05
しかし…第二次世界大戦勃発、そして敵性外国人として収容所に送られるレジーたち。彼らのこれまでの努力を全て無に帰す戦争というどうしようもない絶対悪。エンドロールに登場したのはもちろん今も存命の朝日軍の方だろう。2003年にはカナダの移民社会や野球文化への功績が認められ、カナダの野球殿堂入りを果たしたそうだ。過去にシアトルマリナーズにイチローや大魔神・佐々木が、トロント・ブルージェイズに川崎宗則が在籍し、レジーたちが愛した野球を通じて今でも両国の絆を深めてくれている。全ては彼らから始まったんだと思うと本当に感慨深い。公式サイトへ
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ストーリー:1900年代初めのカナダ・バンクーバー。貧しい日本から新天地を目指してカナダにやって来た日本人たちは、想像を絶する激しい肉体労働や貧しさに加え、差別にも苦しんでいた。製材所で働くレジー笠原(妻夫木聡)やケイ北本(勝地涼)、漁業に携わるロイ永西(亀梨和也)らは野球チーム「バンクーバー朝日」に所属し、最初は白人チームにばかにされながらも、次第に現地の人々にも認められていく。(シネマトゥデイ)



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