紙の月/納得のTIFF観客賞・主演女優賞
2014.11.15 Sat. 18:52 -edit-

舞台はバブル崩壊後の1994年。銀行の契約社員になった梅澤梨花(宮沢りえ)は仕事は真面目で態度も良いのだが、どこか幸薄く満たされない様子だ。そんな彼女が取引先の家で運命の出逢いをする。相手は大学生の平林光太(池松壮亮)。簡単に言うと彼と不倫を始め、彼に貢ぐために銀行の金を横領してしまうワケだ。もっとも一方的に恋をして入れあげたわけでもないし、光太がそれを利用して金を要求したわけでもない。ごく自然な流れでそうなってしまったというこの描き方が上手い。

ちなみにお金の横領にに関しては細かいことはよく解らなかったな。ま、方法論が問題ではないからそこはどうでもいいんだけど。何で彼女がそんな行為をしてしまったのか、それは彼女が子供の頃のある出来事に起因している。要するに梨花は人に与えることでしか幸せを感じられない人だったってことらしい。光太と知り合って幸せそうな笑顔を見せる梨花。この辺、どこか満ち足りていない空虚な女性が、今風に言うならリア充な女性へと変貌するんだけど、その宮沢りえの芝居が素晴らしい。

言う慣れば単に黒が白に変わるのではなく、黒を内包した白に変わるんだよね。彼女ってこんなにお芝居上手かったかな?それにしてもイイ女になったなぁと思う。ベッドシーンでは、別に胸を見せているわけでもないけれど凄く色っぽくて良かったよ。もっとも池松壮亮の演技も見逃せない。何だこの母性本能をくすぐるような笑顔は(笑)私が守ってあげなきゃ的な、捨てられている子犬を拾わなきゃと思わせるような芝居は見事に宮沢りえと噛み合ってるんだよね

さて、芝居もさることながらこの物語の面白いのは、梨花の人間性と金中心の世界への問題提起を合体させたところにあるんじゃないだろうか。俺は梨花は金それ自体はなんとも思っていないと思う。それが人を幸せにするなら使うし、それで自分が幸せになれるならなお願ったりだし。これって一見ムチャクチャだけど、ある意味金の有効な使い方では?なんて思ったりもする。ただし、最終的にはやはり彼女は虚無感に襲われることになる。お金のもたらした幸福感は結局この2人の不安も掻き立てる結果になっているんだよね。それでも最終的には梨花の信念は揺らがない。ラストシーンではそれが垣間見えた。小林聡美演じる隅より子との掛け合いは静かだけど迫力があって思わず見入ってしまったよ。


ストーリー:バブルがはじけて間もない1994年、銀行の契約社員として働く平凡な主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)は綿密な仕事への取り組みや周囲への気配りが好意的に評価され、上司や顧客から信頼されるようになる。一方、自分に関心のない夫との関係にむなしさを抱く中、年下の大学生・光太と出会い不倫関係に陥っていく。彼と逢瀬を重ねていくうちに金銭感覚がまひしてしまった梨花は、顧客の預金を使い始めてしまい…。(シネマトゥデイ)
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テーマ: 映画レビュー
ジャンル: 映画
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コメント
俺の世代だとどうしてもアイドルというかそれこそ「Santa Fe」時代が頭に残ってたりするんですよ^^;
URL | Caine #IqMj.zRI
ありがとうございます。小林聡美さんとの掛け合いは、うちに激しさを秘めたというか、決してがなりたてるわけではないけれど、迫真のやりとりでしたね。思わず見とれました。
URL | Caine #5spKqTaY
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