ラスト・ナイツ/日本もハリウッドもあるか!
2015.11.16 Mon. 16:08 -edit-

『CASSHERN』、『GOEMON』と話題作を世に送り出してきた紀里谷和明監督のハリウッドデビュー作品。忠臣蔵をベースにしており、理不尽に主君を殺されその誇りを踏みにじられた騎士たちが復讐を果たす物語だ。主演は『マイ・ブラザー 哀しみの銃弾』のクライヴ・オーウェン。共演に『インビクタス/負けざる者たち』などの名優モーガン・フリーマン、『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』のクリフ・カーティス、『超高速!参勤交代』の伊原剛志らが出演している。
■ハリウッド映画だが日本映画
『GOEMON』を観た時に、やっと日本人監督でもハリウッドで活躍できるであろう感性をもった監督が出てきたと感じた。既存の日本映画の映像スケールや発想を超えたあの作品は、個人的には大好きだった。が、どうも世間一般には受け入れられず、まして評論家の方々はお気に召さなかったようで、あれからどうしちゃったのかな?と思っていたらなんと紀里谷監督、バラエティ番組「しくじり先生」に登場してきたではないか。番組の中で思いの丈を吐き出し、映画評論家・有村昆をぶっ叩いた姿は作品が大好きだった者としては堪らないカタルシスを感じてしまったものだ。紀里谷監督は日本映画界からは評価されずとも、ハリウッドで評価され、そしてこの作品を作ることになる。が、正直なところ『CASSHERN』や『GOEMON』のような飛び抜けた映像やストーリーは鳴りを潜め、ハリウッド映画ながらも日本映画らしい日本映画になっていたと思う。
■より日本人の心に寄り添った展開
忠臣蔵ベースのハリウッド映画と言えばキアヌ・リーヴスの『47RONIN』が記憶に新しいが、何やら形に拘ってしまったあの珍作とは異なり、本作はしっかりその心を騎士の魂としてベースに据えて描いていた。もちろんストーリーは忠臣蔵なので、主人公の騎士ライデン(クライヴ・オーウェン)は大石内蔵助、ライデンの主君バルトーク卿(モーガン・フリーマン)は浅野内匠頭、敵役の首相ギザ・モット(アクセル・ヘニー)は吉良上野介、皇帝は将軍といったようにキャラクターは明確に解るようになっている。ただ、忠臣蔵では浅野内匠頭は切腹だったが、こちらでは皇帝の命令でライデンが主君バルトーク卿の首をはねるように変更されている。もちろんこれは欧米人に理解しやすい改変だが、それゆえに今の日本人の気持にもしっくり寄り添う展開になっていると言えるだろう。個人的に言うとこれは少し意外でもあった。紀里谷監督ならばもっと忠臣蔵を破天荒なお話として見せてくれるのではないかと思っていたからだ。
■クライヴ・オーウェンだからいい
バルトーク卿が死に、その領地は没収され騎士団は散り散りになり、それぞれが敵討ちのために下野して時を待つことになる。その間、ライデンは見張りを騙すために酒や女に溺れ、主君からもらった剣ですら売り払ってしまうのだった。(もちろん売ってはいないのだが。)余談だが、字幕で“SWORD”を“刀”としているのはちょっと違うと思う。わざわざ監督が騎士道に見立てて話を進めているのに何故そこで“刀”なのか。“刀”は片刃であり、“SWORD”はあくまで“剣”でなくてはおかしい。話を戻そう。そして敵討ち、次々と倒れていく騎士たち…もう少しそれぞれの騎士達の人となりが描かれていると感情移入もしやすかったのではないかとは思う。もっとも日本人的にはその辺は続く結末への期待感で脳内補完がかかるとは思うけれど。ここでの見どころは伊原剛志との対決だろう。クライヴ・オーウェンという人は実力ある俳優なれども、どちらかと言えば地味なのは否めない。がしかし、今回はその地味な部分が良い方向に作用していた。
例えばトム・クルーズがライデンだったら完全にヒーローになってしまう。ブラピでもラッセル・クロウでもマット・デイモンでも。しかしクライヴだからこそ実直な騎士としての人柄が表現できたのではないかと思う。伊原剛志も名優なれど、いわゆる主演タイプではない。自らの主君ギザ・モットがクズ野郎なのは分かっていても、自らの騎士道に生きる者としてはライデンとの対決は避けられない訳で、そこに単なる正義と悪の対決という欧米風の単純な二元論に流されない想いが込められていたと感じる。つまり今回の紀里谷監督はハリウッドという舞台で日本的なものと欧米的なものの垣根のなさを示して見せたように思う。
◯公式サイト
◯シネマトゥデイ
■ハリウッド映画だが日本映画
『GOEMON』を観た時に、やっと日本人監督でもハリウッドで活躍できるであろう感性をもった監督が出てきたと感じた。既存の日本映画の映像スケールや発想を超えたあの作品は、個人的には大好きだった。が、どうも世間一般には受け入れられず、まして評論家の方々はお気に召さなかったようで、あれからどうしちゃったのかな?と思っていたらなんと紀里谷監督、バラエティ番組「しくじり先生」に登場してきたではないか。番組の中で思いの丈を吐き出し、映画評論家・有村昆をぶっ叩いた姿は作品が大好きだった者としては堪らないカタルシスを感じてしまったものだ。紀里谷監督は日本映画界からは評価されずとも、ハリウッドで評価され、そしてこの作品を作ることになる。が、正直なところ『CASSHERN』や『GOEMON』のような飛び抜けた映像やストーリーは鳴りを潜め、ハリウッド映画ながらも日本映画らしい日本映画になっていたと思う。
■より日本人の心に寄り添った展開
忠臣蔵ベースのハリウッド映画と言えばキアヌ・リーヴスの『47RONIN』が記憶に新しいが、何やら形に拘ってしまったあの珍作とは異なり、本作はしっかりその心を騎士の魂としてベースに据えて描いていた。もちろんストーリーは忠臣蔵なので、主人公の騎士ライデン(クライヴ・オーウェン)は大石内蔵助、ライデンの主君バルトーク卿(モーガン・フリーマン)は浅野内匠頭、敵役の首相ギザ・モット(アクセル・ヘニー)は吉良上野介、皇帝は将軍といったようにキャラクターは明確に解るようになっている。ただ、忠臣蔵では浅野内匠頭は切腹だったが、こちらでは皇帝の命令でライデンが主君バルトーク卿の首をはねるように変更されている。もちろんこれは欧米人に理解しやすい改変だが、それゆえに今の日本人の気持にもしっくり寄り添う展開になっていると言えるだろう。個人的に言うとこれは少し意外でもあった。紀里谷監督ならばもっと忠臣蔵を破天荒なお話として見せてくれるのではないかと思っていたからだ。
■クライヴ・オーウェンだからいい
バルトーク卿が死に、その領地は没収され騎士団は散り散りになり、それぞれが敵討ちのために下野して時を待つことになる。その間、ライデンは見張りを騙すために酒や女に溺れ、主君からもらった剣ですら売り払ってしまうのだった。(もちろん売ってはいないのだが。)余談だが、字幕で“SWORD”を“刀”としているのはちょっと違うと思う。わざわざ監督が騎士道に見立てて話を進めているのに何故そこで“刀”なのか。“刀”は片刃であり、“SWORD”はあくまで“剣”でなくてはおかしい。話を戻そう。そして敵討ち、次々と倒れていく騎士たち…もう少しそれぞれの騎士達の人となりが描かれていると感情移入もしやすかったのではないかとは思う。もっとも日本人的にはその辺は続く結末への期待感で脳内補完がかかるとは思うけれど。ここでの見どころは伊原剛志との対決だろう。クライヴ・オーウェンという人は実力ある俳優なれども、どちらかと言えば地味なのは否めない。がしかし、今回はその地味な部分が良い方向に作用していた。
例えばトム・クルーズがライデンだったら完全にヒーローになってしまう。ブラピでもラッセル・クロウでもマット・デイモンでも。しかしクライヴだからこそ実直な騎士としての人柄が表現できたのではないかと思う。伊原剛志も名優なれど、いわゆる主演タイプではない。自らの主君ギザ・モットがクズ野郎なのは分かっていても、自らの騎士道に生きる者としてはライデンとの対決は避けられない訳で、そこに単なる正義と悪の対決という欧米風の単純な二元論に流されない想いが込められていたと感じる。つまり今回の紀里谷監督はハリウッドという舞台で日本的なものと欧米的なものの垣根のなさを示して見せたように思う。
◯公式サイト
◯シネマトゥデイ
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テーマ: 映画レビュー
ジャンル: 映画
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コメント
例えばスティーブン・セガールがライデンだったら、モーガン・フリーマンは死なずにその場の全員が地獄行きだ。
例えばジャン・クロード・ヴァンダムがライデンだったら剣よりキックが炸裂だ。
例えばウェズリー・スナイプスがライデンだったら、ライデン自身が脱税しそうでマズイよなあ。
クライヴ・オーウェンと伊原剛志の決着の付け方が上手かったですねえ。どちらも並々ならぬ技量を持ち、主君への忠誠も持っているのだけど、主君から授かった物の差で勝敗が決する。あれは前振りも込みで、凄く考え抜かれた決着だったと思います。
例えばジャン・クロード・ヴァンダムがライデンだったら剣よりキックが炸裂だ。
例えばウェズリー・スナイプスがライデンだったら、ライデン自身が脱税しそうでマズイよなあ。
クライヴ・オーウェンと伊原剛志の決着の付け方が上手かったですねえ。どちらも並々ならぬ技量を持ち、主君への忠誠も持っているのだけど、主君から授かった物の差で勝敗が決する。あれは前振りも込みで、凄く考え抜かれた決着だったと思います。
URL | ふじき78 #rOBHfPzg
2015/11/18 08:37 * edit *
▶ふじきさん
あの剣の使い方は上手かったねぇ。要するに主君の差が勝敗を決したわけだよね。しかしクライヴと伊原さんの対決とかどんだけ渋いんだって感じ。そこ重要よ。URL | Caine #5spKqTaY
2015/11/19 02:48 * edit *
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『ラスト・ナイツ』をトーホーシネマズ日本橋6で観て、とてもいいけど一つ疑問があるよふじき★★★★
五つ星評価で【★★★★忠臣蔵が好きなので】 忠臣蔵が好きなので、これを翻案して上手く作ってあると「ええなあ」と思ってしまう。今回は日本人が脚本・監督を担った事で、かっ ...
ふじき78の死屍累々映画日記
2015/11/18 09:03
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