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MOVIE BOYS

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映画が好きです。だから一生懸命観ます。面白いところをみつけて楽しみたいけど、時としてそれが出来ないこともあります。でもそれも映画です。

岸辺の旅/ちゃんと生きる、ちゃんと死ぬ 

岸辺の旅『Seventh Code セブンス・コード』の黒沢清監督が、湯本香樹実の同名小説を映画化。3年間行方不明だった夫が不意に帰ってきたが、実はそれは夫の幽霊だった―。主演は『マイティ・ソー』などハリウッド映画でも活躍する浅野忠信と『踊る大捜査線』『寄生獣』などの深津絵里。他にも小松政夫、蒼井優、柄本明、奥貫薫ら人気俳優が揃う。脚本は『私の男』で浅野忠信と組んだ宇治田隆史。死んでいる人間が幽霊として生きた人間と絡むという意味では『黄泉がえり』のような感じではあったが、あそこまでドラマチックな演出ではなく、静かに淡々と進んでいく。失われた3年という時間を夫がたどってきた道を旅しながら埋めていく様子を描いた物語だった。
最初はホラーのように…
そもそも夫・優介(浅野忠信)が妻・瑞希(深津絵里)の前に現れるシーンが怖い。この作品の映像表現全般に言えることなんだが、余韻とかファジーさを残さず結構バッサリと現れたり消えたりする。だからある瞬間、暗い部屋にいきなり男が立ってるという、ちょっとホラーな始まりだった。ところが、優介はアッケラカーンと「俺死んでるんだ」と、自分が幽霊だとカミングアウトしてしまう。とはいっても足もあるし、瑞希の作った白玉は食べるし、瑞希と触れ合うことも出来るんだから、なんだか幽霊の概念自体覆している。覆しているけどやっぱり幽霊というこの、生ハムメロンのような、オレンジソースで食べる鹿肉のような正反対のものを組み合わせた味わいが面白い。

愛する人の死を受け入れる旅
最初に優介と瑞希は、とある街の新聞配達店を営業する島影(小松政夫)の元を訪ねるのだが、実は島影も優介と同じく幽霊だった。しかし島影自身は自分が死んでいることに気づいていない。二人は数日を共に過ごし、彼の話し相手になりながら、彼が成仏する姿を見届ける。次に訪れたのは中華料理店。そこの夫妻の妻フジエは子供の頃10歳の妹をなくしたのだが、そのことをずっと心に病んでいた。現れた妹の幽霊に瑞希は優しくピアノを教え、彼女を成仏させる。自分の死を受け入れる、そして愛する人の死を受け入れる、それは口で言うほどやさしいことではないが、瑞希は島影やフジエを通じて、そうと意識せず優介の死を受け入れる準備をしていたのではないだろうか。

お互いの愛を深め合う旅
そんな旅の最中に、優介が浮気をしていたことが判明する。彼は歯科医なのだが、相手は同じ病院の事務員・朋子(蒼井優)だった。優介はタダの遊びだというが、もちろん瑞希は納得出来ない。そして瑞希は旅から引き返し朋子に会いに行くのである。死んでから知る夫の真実。そして朋子だけが知る優介がそこにはいて、同時に瑞希だけが知る優介もそこにいる。結局夫婦といってもお互いに全てを解っているなどということはありえないのだ。行方不明の間の3年間もそう。やがて瑞希は優介に彼がまだ知らない自分の話をしたりするようになる。要するにこの度はお互いの愛をより深め合う旅に他ならない…。しかし、いずれは別れが訪れるのは解っている。当然それは我々見ている側にも。だからこそ、貴重な時間であるとともに、胸が苦しくなる。

生きる覚悟を決めた旅
最後に2人が訪れるのは山間の村だ。優介はここで先生と呼ばれていた。星谷(柄本明)の家で働きながら滞在する2人。星谷には義娘・薫(奥貫薫)がいるのだが、実はその夫・つまり星谷の息子タカシが幽霊だった。星谷の話しによれば、タカシがいなくなってから暫くの間、薫は行方不明だったらしい。要するに彼らは今の優介と瑞希と同じだったのだ。最後の最後まで未練を残しながらタカシは消えていく。ここに至って瑞希は優介との別れは避けられないものだと悟るのである。村を出て海岸にやってきた2人。「行かないで」と訴える瑞希をやさしい瞳で見つめる優介…。そして彼は出てきた時と同様に不意に消える。それはきっと瑞希が優介の死を受け入れた、そしてこれから前に進もうと決めた瞬間の出来事なのだろう。あまりのあっけなさは観るものにすら喪失感を与えるかもしれない。

冷静に考えると瑞希は幸せなんだろうと思う。世の中には愛する人ときちんとお別れできないままの人は多い。その人をどれだけ深く愛していたのか、その人にどれだけ深く愛されていたのかを再確認出来ることなどないに等しい。優介と瑞希のラブストーリーは哀しいけれど嬉しい、そう、最初に書いた正反対の味の組み合わせが私達の気持を揺さぶるのだと思う。

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