相変わらず中身はそこそこ、こまかいストーリーへの突っ込みはどうでもいいからこの凄いアクションを見てくれ!という分かり易い映画。でもトニー・ジャーの作品はそれでいい。両方求めて両方しょーもないレベルに落ち着く日本のアクション映画に比べたら100倍マシだ。「マッハ」シリーズは
『マッハ!』、
『マッハ!弐』、
『マッハ!参』と本作があるが、名作と言われる第一作と本作はプラッチャヤー・ピンゲーオ監督が、そして駄作と言われる弐と参は主演のトニー・ジャーが監督を務めている。で、改めて思ったのは、トニー・ジャーは自分で監督はしない方がいいってこと。なんせ弐と参は得意のアクションからしてがっかりだったから。

ちなみに邦題で無理矢理続編扱いにするからややこしいんだけど、原題を見るとその辺はすっきりする。第一作目の『マッハ!』は原題『OngBak』で
『マッハ!弐』、
『マッハ!参』はそれぞれ『OngBak2』と『OngBak3』。本作の原題は『Tom Yum Goong2』で、これは同じピンゲーオ監督の『トム・ヤム・クン!』の続編という扱いだ。要するに監督の中ではこの作品はマッハの4作目ではないんだね。この辺の詳細は定かではないけれど、
『マッハ!弐』を撮りたかったトニーとその気がなかったピンゲーオ監督との間で揉めたというのが映画ファンの間では定説となってたりする。ともあれ、無事和解?したのか、この黄金コンビが復活したのは嬉しい限りだ。

映画の内容に関しては実はもうそんなに書く事がない。最初に書いた通り、彼らの作品は中身はあってないようなものなので。実際今回も争っていた架空の隣国同士が和平を結ぶのをテロリストが邪魔し、それを主人公が防ぐという流れだけれど、みていても今ひとつピンと来ないというか、あんまり良く解らない。でも映画を楽しむ上では別にさして影響もないんだよね。今回は宣伝で最初からワイヤーも使うしCGも使うと言ってるけれど、それもあからさまなチープさではなく、あくまで肉体的なアクションを補完するという分をわきまえた使い方なので、嘘っぽさはなかった。それどころか前半に見せてくれる長尺アクションシーンはそのハチャメチャぶりに驚かされる。

こればっかりは自分の目で見た方が良いとしか言えないのがもどかしいんだが、見ながら心の中で「おうおうおう!」とテンションがあがるのは間違いないだろう。おしなべて満足なこの作品で唯一にして最大の不満はもう1人のアクションスター、同じピンゲーオ監督の傑作
『チョコレート・ファイター』で主演を務めたジージャー・ヤーニンのフィーチャーの仕方だ。可愛らしい女の子(といってももう30歳だけど…)が激しいマジアクションを見せてくれたあの作品の再来を期待していた俺としては、彼女が思いの外弱い扱いになっていたのが残念でならない。トニー・ジャーが主人公で主演なので仕方ないけれど、この2人が同格で暴れ回ることを期待していたからね。

もちろん弱かったと言ってもそれは過去の彼女が主演した出演作に比べてという意味で、アクションの質自体は非常に高い。この辺は日本でアクション女優とか言っている武田梨奈あたりは是非勉強して彼女に迫って欲しいと思う。ま、その前にプラッチャー・ピンゲーオに迫る監督が出るかどうかだけど。
『マッハ!』で観たあの衝撃は既にもう慣れてしまったせいか感じられなかったけれど、それでもタイ映画界、いやアジアの誇るアクションスターとアクション監督の作品は、その映像だけで十分楽しめる作品に仕上がっていたと思う。ちなみに、この作品では特に象が重要なポジションなのだけれど、それに関しては観る前に
ここを読んでおくといいかも。

←Click Pleae♪ストーリー:古式ムエタイ兵士の子孫であるカーム(トニー・ジャー)は、象のコーンと一緒にタイの小さな村で暮らしていた。ある日、突然現れた動物密輸入組織のボス・スチャートと手下たちによって誘拐されたコーンを取り戻すため、カームはバンコクに向かう。だが、彼が屋敷に侵入したときにはすでにスチャートは息絶えており、カームに殺人の疑いが掛かる。(シネマトゥデイ)
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